「税理士が勧めたから大丈夫」は危ない?サザン関口さんの会社の申告漏れから学ぶ、節税提案の見極め方

税務ニュース解説

サザンオールスターズのメンバー、関口和之さんが代表を務める会社が、東京国税局から約5億8千万円の申告漏れを指摘されたと、2026年10月4日に報じられました。会社も同じ日に、お知らせとお詫びを公表しています。

このニュースを読んだときの私の第一印象は、「こんな怖い節税スキームを提案する税理士がいるんだ」という衝撃でした。金額の大きさにも驚きましたし、私だったら、怖くてとてもできません。

この記事では、まず報道と会社の公式発表で確認できた事実だけを整理します。報道によって書き方が違うところは、どこにどう書かれているかが分かるように出典を添えました。そのうえで、税理士として私が感じたこと、経営者の方にお伝えしたいことをお話しします。

何が報じられたのか

共同通信の配信記事(2026年10月4日)によると、指摘を受けたのは、関口和之さん(70)が代表取締役を務める音楽関連会社「のほほん」(東京都目黒区)です。NHKは、この会社を「関口氏の著作権の管理などを行う会社」と伝えています。

共同通信の報道(要旨)

東京国税局から、2023年9月期までの3年間で約5億8千万円の申告漏れを指摘されていたことが、関係者への取材で分かった。追徴税額は過少申告加算税を含めて約5,300万円。不当に税負担を軽くする「節税スキーム」を使ったと認定された。

出典:共同通信「サザン関口氏の会社申告漏れ指摘 東京国税、3年間で5億8千万円」(2026年10月4日、熊本日日新聞・秋田魁新報の配信記事で確認)

NHKの報道(見出しと冒頭部分)

関口氏の著作権の管理などを行う会社が、東京国税局の税務調査を受け、税理士から紹介された節税の方法は認められないとして、5億8000万円余りの申告漏れを指摘された。

出典:NHKニュース「サザン関口和之氏の著作権管理会社 5億8000万円余の申告漏れ」(2026年10月4日 5:11)。本文の続きは確認できていません。

ここで一つ押さえておきたいのは、指摘を受けたのは関口さん個人ではなく、関口さんが代表を務める会社だという点です。どの報道も「関口氏が代表を務める会社」への指摘として伝えています。

報じられた取引の流れ

取引の中身を具体的に伝えているのは、共同通信です。関係者の話として、次のように報じています。

  • 2021年(令和3年)2月、会社は、当時顧問だった税理士法人の側が用意した会社の株式を5億8,800万円で取得した。
  • その会社から配当を受けた。
  • その後、資産が大きく減って価値が下がった株を、150万円で関口さん個人に売却した。
  • 取得した金額との差額5億8,650万円を損失として計上し、会社の所得を圧縮した。翌期以降も納税額を引き下げていた。
報じられた取引の流れ 会社が税理士法人側の用意した会社の株式を5億8800万円で取得し、配当を受け、その株を150万円で関口氏個人に売却し、差額5億8650万円を損失として計上した流れの図 ① 2021年2月 株式を取得 税理士法人側が 用意した会社の株式 5億8,800万円 ② 配当を受ける 株式を取得した 会社から配当 (金額は報道なし) ③ 株式を売却 価値が下がった株を 関口氏個人へ 150万円 ④ 差額を 損失に 計上 5億8,800万円(取得)− 150万円(売却)= 5億8,650万円 この差額を損失として計上し、所得を圧縮していたと報じられています 東京国税局の判断(報道) 株の売買や配当を組み合わせた取引に経済的合理性がなく、不当に税負担を減らした
図1 報じられた取引の流れ(出典:共同通信 2026年10月4日配信記事をもとに当事務所作成。関係者への取材に基づく報道内容です)

共同通信によると、東京国税局は、株の売買や配当を組み合わせた取引に経済的合理性がなく、不当に税負担を減らしたと判断したとされています。また、同じようなスキームを、顧問だった税理士法人の側が少なくとも数十社に紹介していたことが確認されているとも報じています。

※国税局は個別の税務調査の内容を公表していません。この章の内容は、共同通信が「関係者によると」として報じたものです。

会社が公表した「お知らせとお詫び」

報道と同じ2026年10月4日、会社(有限会社のほほん)は、運営するウクレレ専門店「ポエポエ」の公式サイトに、代表取締役 関口和之さんの名前で「報道がありました件についてお知らせとお詫び」を掲載しました。内容は次のとおりです。

会社の発表(要旨)

・国税当局から指摘を受けたのは、令和3年9月期に計上した損金の算入について。

・国税当局の判断を真摯に受け入れ、本税と過少申告加算税をすべて納付した。

・複数年にわたって収入や所得を申告していなかったという事実はない。

・事実の隠蔽や仮装があった場合に課される重加算税は課されておらず、そのような指摘も国税当局から受けていない。

・この損金に関する取引は、当時の顧問税理士から、適法な取引であるとの説明とともに提案を受けたものだった。

・国税当局の指摘を受け、その税理士と税理士法人との契約はすでに解除した。今後、税務に関する体制を改めて整備する。

出典:有限会社のほほん「報道がありました件についてお知らせとお詫び」(2026年10月4日)

報道と会社発表を並べてみる

報道と会社の発表を項目ごとに並べると、次のようになります。

項目報道(共同通信・NHK)会社の発表
指摘の対象2023年9月期までの3年間で、約5億8千万円の申告漏れ(共同通信)令和3年9月期に計上した損金の算入
税金追徴税額は過少申告加算税を含めて約5,300万円(共同通信)本税と過少申告加算税をすべて納付
重加算税(確認した報道では言及なし)課されていない。隠蔽・仮装の指摘も受けていない
取引の提案者当時顧問だった税理士法人の側が株式を用意(共同通信)/税理士から紹介された節税の方法(NHK)当時の顧問税理士から、適法な取引との説明とともに提案された
顧問税理士との関係(確認した報道では言及なし)税理士・税理士法人との契約は解除済み
収入の申告(確認した報道では言及なし)複数年にわたり収入・所得を申告していなかった事実はない

報道は「3年間」、会社の発表は「令和3年9月期に計上した損金」と、書き方が異なります。共同通信は、損失を計上して所得を圧縮し、翌期以降も納税額を引き下げていたと報じています。どちらも、その書きぶりのまま載せています。

「過少申告加算税」と「重加算税」の違い

今回のニュースでは、会社が「過少申告加算税は納付した」「重加算税は課されていない」と、二つの加算税をはっきり分けて説明しています。ここでは、この二つの違いを国税庁の資料と法律で確認しておきます。

過少申告加算税

期限内に申告していたものの、あとから税額が少なかったことが分かり、修正申告や更正(税務署による訂正)があった場合にかかる加算税です(国税通則法第65条)。税務調査があったことで更正を予知して修正申告した場合などは、追加で納める税額の10%。そのうち、期限内に申告した税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は15%になります。

重加算税

税額の計算のもとになる事実を隠したり、偽ったり(隠蔽・仮装)して申告していた場合に、過少申告加算税に代えて課されるものです(国税通則法第68条)。国税庁の資料では、過少申告加算税に代えて課される重加算税の割合は35%とされています。

過少申告加算税と重加算税の比較 過少申告加算税は調査による更正予知以後で10パーセント、期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15パーセント。隠蔽・仮装があった場合は過少申告加算税に代えて重加算税35パーセント。今回の会社は過少申告加算税を納付し、重加算税は課されていないと発表。 税額が少なかったときにかかる加算税(調査による場合) 過少申告加算税 10% 期限内申告税額と50万円の いずれか多い額を超える部分は15% 国税通則法第65条 重加算税 35% 隠蔽・仮装があった場合に 過少申告加算税に代えて課される 国税通則法第68条 会社の発表:納付済み 会社の発表:課されていない
図2 過少申告加算税と重加算税(出典:国税通則法第65条、国税庁「加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし」、有限会社のほほんの発表をもとに当事務所作成。加算税の割合は、調査による更正等を予知した後の修正申告等の場合です)

今回の件について、確認できた報道・発表では、「脱税」として刑事告発されたという内容は見当たりませんでした。会社の発表では、課されたのは過少申告加算税であり、重加算税は課されていないとされています。

税理士として、私はこう考えます

よく考えられている。でも、経済的な実態がない

報道されているのは、スキームのごく一部です。図1でも、株を価値が下がったあとに売れば売却損が出る、というところまでは示せますが、なぜその株の価値が下がったのかまでは、報道からは詳しく分かりません。

正直に言うと、仕組みを追いかけてみて「めちゃくちゃ考えられているな」とは思いました。法律の抜け穴を狙ったものなのだろうと思います。でも、経済的な実態がまったくない取引です。普通の良心を持って働いている人なら、まずやらないよね、というのが私の率直な気持ちです。

税理士 眞弓倫子

本当に入り組んだ手法で、税理士の私でも、一つずつ紐解いて「あ、そういうことね」と納得するまでに少し時間がかかりました。一般の方がこれを説明されて、100%理解できたかというと、正直なところ疑問が残ります。

「税理士先生が言うなら」という信頼の重さ

私は、会計事務所の事務員として働いてきた期間がとても長く、39歳でようやく税理士の資格を取りました。

資格を取る前と後で、私自身は何一つ変わっていません。それなのに、税理士のバッジをつけた瞬間から、周りの見る目が大きく変わったのです。バッジ一つでこんなに変わるんだ、税理士という仕事はそれだけ社会から信頼されているんだ、と感じたことをよく覚えています。

そう考えると、提案を受けた側は「税理士の先生が言うのなら、違法ではないんだ。認められるんだ」と受け止めてしまうのではないでしょうか。

また、報道では、同じようなスキームが少なくとも数十社に紹介されていたとされています。実際にそう言われたかどうかは分かりませんが、もし「みんなやっていますよ」と言われていたとしたら。信頼している人が言っている、みんなもやっている。よく分からないけれど、やってもいいのかな。そんな心理が働いたのではないか、と私は想像しました。

私は、こういう提案は絶対にしません

私も、法律の範囲内で「こうした方が税金を抑えられますよ」とお伝えすることはあります。でもそれは、実態が伴っていることが前提です。

今回の取引は、株式の売買や配当を組み合わせた取引に経済的合理性がなく、不当に税負担を減らしたと国税局が判断した、と報じられています。

税理士 眞弓倫子

こういう提案は、絶対にしません。私自身の信頼に関わりますし、何かあってお客様がこうして報道されてしまったら、お客様の信頼を損ねることになります。信頼を損ねることは、その後の事業に本当にマイナスの影響を与えてしまいます。事業は、やっぱり誠実にやらなければいけないと思うのです。

節税の提案を受けたときに、確認してほしいこと

財産をお持ちの方は、銀行や証券会社など、いろいろなところから「こうすると節税できますよ」という提案を受けることがとても多いようです。そんなとき、私が経営者の方にお願いしたいのは、次の流れです。

節税の提案を受けたときの考え方 節税の提案を受けたら、まず法律の話の前に人として常識的にどうかを自分の心で考える。少しでも疑問を持ったら、提案者以外の人に相談する。税理士からの提案でも、別の専門家にセカンドオピニオンを求める。相談先は多いほどよい。 ステップ 1 自分の心で考える 法律の話はいったん置いて 「人として常識的に どうなのか」 ステップ 2 疑問を持ったら 提案した人以外の人に まず相談する ステップ 3 セカンドオピニオン 税理士からの提案でも 別の専門家に聞く 相談する相手は、多ければ多いほどいい 「税理士が言うから」「みんなやっているから」だけで決めない
図3 節税の提案を受けたときの考え方(税理士 眞弓倫子の考えをもとに当事務所作成)

税理士 眞弓倫子

提案を聞いたら、まず法律のことは抜きにして、自分の心で「これは人としてどうなのかな」と考えてみてください。法律には触れていないとしても、常識的にどうなのかと少しでも疑問を持ったら、ほかの人に相談してほしいのです。税理士が言ったことであっても、セカンドオピニオンとして別の人に聞いてください。相談する相手は、多ければ多いほどいいと思います。

節税の提案を受けたときのチェックリスト

  • 法律の話の前に、「人として常識的にどうか」を自分の心で考えた
  • お金の流れや事業上の目的など、経済的な実態がある取引か確かめた今回の件では、国税局が「経済的合理性がない」と判断したと報じられています(共同通信)。
  • 仕組みを、自分の言葉で説明できるところまで理解できている入り組んだ仕組みは、説明を受けても全部を理解するのは簡単ではありません。
  • 「税理士が言うから」「みんなやっているから」だけで決めていない
  • 提案した人以外の専門家に、セカンドオピニオンを聞いた
  • もし報道されたとしても、お客様や取引先に胸を張って説明できる

まとめ

  • 関口和之さんが代表を務める会社「のほほん」が、東京国税局から約5億8千万円の申告漏れを指摘されたと報じられた(共同通信・NHK)。
  • 報道によると、当時の顧問税理士法人の側が用意した株式の取得・配当・売却を組み合わせ、差額5億8,650万円を損失として計上していた。国税局は、経済的合理性がなく不当に税負担を減らしたと判断した(共同通信)。
  • 会社は、令和3年9月期の損金算入について指摘を受け、本税と過少申告加算税を納付したこと、重加算税は課されていないこと、顧問税理士との契約を解除したことを公表した。

読み終えた経営者の方にお願いしたいのは、安易な節税の提案に乗らないことです。法律に触れるかどうかだけでなく、「人としてどうなのか」を一度考え、ほかの人にも聞いてみる。今回のニュースを教訓に、気持ちを引き締めていただけたらと思います。

税金を抑える工夫は、実態のある取引の中でこそ成り立ちます。当事務所は、お客様の信頼と事業を守るために、誠実なご提案を続けていきます。

節税の提案を受けて「これは大丈夫かな?」と気になったときは、セカンドオピニオンとしてお気軽にご相談ください。

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参考資料

  1. 有限会社のほほん「報道がありました件についてお知らせとお詫び」(2026年10月4日)
    https://nofofon.com/報道がありました件についてお知らせとお詫び/
  2. 共同通信「サザン関口氏の会社申告漏れ指摘 東京国税、3年間で5億8千万円」(2026年10月4日、熊本日日新聞掲載)
    https://kumanichi.com/articles/2042880
  3. 同(秋田魁新報掲載)
    https://www.sakigake.jp/news/article/20261004CO0054/
  4. NHKニュース「サザン関口和之氏の著作権管理会社 5億8000万円余の申告漏れ」(2026年10月4日)
    https://news.web.nhk/newsweb/na/nd-20261003de54104
  5. 国税通則法 第65条(過少申告加算税)・第68条(重加算税)(e-Gov法令検索)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066
  6. 国税庁「加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし」(平成28年12月)
    https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/kasan.pdf

※本記事は令和8年10月8日時点で確認できた報道・公表情報をもとに作成しています。報道内容は、関係者への取材に基づくものを含みます。

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