自社株評価はどう変わる?非上場株式の見直し案と事業承継で今すべきこと

事業承継チェックリスト

「自社株の相続税評価のルールが、大きく変わるかもしれない」。いま、非上場株式の評価方法について、国税庁で見直しの議論が進んでいます。あわせて、事業承継税制の特例措置も令和9年12月末に期限を迎えます。

この話を聞いて、私がまず心配したのは「現行制度で相対的に評価が低かった大会社や、純資産に対する収益力が高い会社では、株価が大きく上がることがあるのではないか」ということでした。

制度はまだ決まっていません。ただ、決まってから慌てても、選べる対策は限られてしまいます。この記事では、国などの公表資料をもとに「いま何が議論されているのか」を整理し、制度がどう決まっても、今のうちに確認しておきたいことをチェックリストにまとめました。

事業承継の税金、いま3つの場所で議論が動いています

会社を後継者に引き継ぐとき、税金の面で大きく関わるのが「自社株をいくらと評価するか」と「その税金をどう納めるか(または猶予してもらうか)」です。この二つについて、2026年の夏にかけて、次の3つの場所で動きがありました。

  • 国税庁:非上場株式(取引相場のない株式)の評価方法を見直すため、有識者会議を開いています。
  • 経済産業省・中小企業庁:検討会で事業承継税制の今後の方向性をまとめ(8月5日に報告書案)、令和9年度の税制改正要望で「抜本的な見直し・強化」を求めています。
  • 日本税理士会連合会(日税連):税制改正の建議書で、株式評価の見直しと、事業承継税制に代わる新しい猶予制度の創設などを求めています。

どれも「まだ決まったこと」ではありません。ただ、3つが同じ時期に動いているのは、事業承継の税金が大きな曲がり角に来ているからだと言えます。

事業承継の税金をめぐる主な日程 令和8年4月20日の有識者会議第1回から、令和9年9月30日の特例承継計画の提出期限、令和9年12月31日の特例措置の期限までを並べたタイムライン 令和8年(2026年) 令和9年(2027年) 4/20 有識者会議 第1回 8/5 中企庁の 検討会が 報告書案 8/20 第5回 見直しの 方向性 8/27 日税連が 建議書を 提出 8/31 経済産業省 の税制改正 要望 9/16 第6回 計算式の 案と試算 9/30 提出期限 特例承継計画 の提出期限 12/31 適用期限 特例措置で 贈与・相続を 行う期限 評価見直しの適用時期は、令和8年9月17日時点で国税庁から示されていません
図1 事業承継の税金をめぐる主な日程(国税庁・中小企業庁・経済産業省・日本税理士会連合会の公表資料をもとに作成。間隔は実際の日数に比例していません)

自社株の評価ルールが、大きく変わるかもしれません

なぜ見直しの議論が始まったのか

非上場株式の相続税・贈与税での評価方法は、法律ではなく、国税庁の「財産評価基本通達」で定められています。今回の見直しのきっかけは、会計検査院からの指摘です。

国税庁の説明(要旨)

令和6年11月の会計検査院の検査報告で、評価方式ごとに評価額にかい離があり、規模の大きい会社ほど株式の評価額が相対的に低く算定されることなどが指摘されました。これを踏まえ、相続税法の時価主義のもとで適正な評価制度のあり方を検討するため、有識者会議を開くこととされています。

出典:国税庁「『取引相場のない株式の評価に関する有識者会議』の開催について」(令和8年4月16日)

いまの評価方法では、会社の規模によって、上場会社の株価と比べる「類似業種比準方式」と、会社の財産から計算する「純資産価額方式」の使い方が変わります。大きな会社ほど類似業種比準方式を使う割合が高く、その結果、評価額が低めになりやすい。この点が問題視されているのです。

なお、週刊税務通信(No.3915)に掲載された国税庁長官の就任インタビューでも、この有識者会議について、税法以外のさまざまな分野の専門家から幅広い議論を期待していると語られています。

国税庁が示した「見直しの方向性」

8月20日の第5回会議で、国税庁は「これまでの議論を踏まえた見直しの方向性」を資料で示しました。ポイントは次のとおりです。

項目国税庁資料で示された方向性(要旨)
会社の規模区分規模別の区分をやめ、幅広い会社を共通の方式で評価することを検討
類似業種比準方式理論的な根拠や実証的な裏付けがないとして、残すのは難しいのではないかと問題提起
新しい方式の候補会社の収益力を重視する方式を主軸にする方向。候補として「残余利益方式」のイメージを提示
純資産価額方式原則的な方式ではなく、「特定の評価会社」向けの方式に位置づけ直すことを検討(第6回では、資産管理会社、組織再編直後の会社、開業後5年未満の会社などが対象の案)
配当還元方式少数株主向けの特別な方式として、使える範囲を見直したうえで残すことを検討
評価を下げる工夫への対応一時的な役員退職金やオペレーティング・リースなどで利益を操作する方法、グループ会社への資産移転などへの対応を検討

出典:国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第5回)資料」(2026年8月20日)、同「(第6回)資料」(2026年9月16日)。いずれも検討中の案です。

週刊税務通信(No.3914)の取材記事によると、国税庁の見直し案は、会社の規模による区分をやめ、類似業種比準方式を廃止して、原則的な評価を「残余利益方式」に一本化するものとされています。あわせて、配当還元方式は対象を「特定の少数株主が取得した株式」に絞ったうえで算式を見直すこと、純資産価額方式では従業員の退職給付引当金を一定の条件のもとで負債として扱うことなども検討されていると報じられています。

非上場株式の評価体系:現在と見直しのイメージ 現在は会社の規模で類似業種比準方式、併用方式、純資産価額方式を使い分けているが、見直し案では規模を問わず残余利益方式に一本化し、純資産価額方式は特定の評価会社、配当還元方式は対象を絞った少数株主に使う 現在 見直しのイメージ(案) 一般の会社(規模で使い分け) 大会社 類似業種比準方式 中会社 類似業種と純資産の併用 小会社 原則:純資産価額方式 (併用方式も選択可) 特定の評価会社 → 純資産価額方式 ・比準要素数1の会社、3要素すべて0の会社 ・株式等保有特定会社、土地保有特定会社 ・開業後3年未満の会社 ・開業前・休業中の会社、清算中の会社 同族株主等以外の株主 → 配当還元方式 一般の会社(規模による区分なし) 残余利益方式 に一本化 類似業種比準方式は廃止する案 特定の評価会社 → 純資産価額方式 ・資産管理会社(株式・土地保有特定会社を整理) ・組織再編直後の会社(新設) ・開業後5年未満の会社 ・開業前・休業中の会社、清算中の会社 特定の少数株主(対象を縮小) → 配当還元方式(算式も見直し)
図2 非上場株式の評価体系:現在と見直しのイメージ(週刊税務通信 No.3914の取材記事、国税庁「有識者会議(第5回・第6回)資料」をもとに作成。見直し案は検討中で、確定したものではありません)

「残余利益方式」とは?

国税庁の資料では、「仮に」残余利益方式を採用した場合のイメージとして、会社の帳簿上の純資産(簿価純資産)に、数年分の「超過収益」を足し引きして評価する方法が示されています。

「超過収益(残余利益)」とは、株主が通常期待する水準を上回る利益のことです。資料では、期待される水準以上に稼いでいる会社は簿価純資産より高く、期待される水準に届かない会社や赤字の会社は簿価純資産より低く評価されるイメージが描かれています。

第6回会議の資料では、計算の仕組みがもう少し具体的に示されました。

  • 出発点は直前期末の純資産。会計基準の違いで差が出ないよう、法人税申告書(税務上の数値)をもとにする案
  • そこに、課税時期前5年間の平均利益・平均配当を使って各期の簿価純資産と残余利益を見積もり、5年分の残余利益を現在価値に割り引いて加減する
  • 残余利益は「利益 -(純資産 × 還元率)」。還元率は、株主が通常期待する収益率で、上場株式などを参考に決める方向
  • 簿価純資産と5年分の残余利益の現在価値の合計に「しんしゃく率」を掛けて評価額とする(しんしゃく率・還元率の水準は今後の検討事項)
  • 役員退職金など一時的な支出や、オペレーティング・リースによる損益は、「正常な利益」に修正して計算する案

また、同じ資料では、利益も配当もない会社の場合、この計算では評価額が簿価純資産より低くなることが示されています。国税庁はこれを、事業用資産を会社を通じて持つコストを考慮した、事実上の評価減効果と説明しています。

還元率(仮定)簿価純資産を100としたときの評価額(しんしゃく率を掛ける前)
2%91(▲9)
5%78(▲22)
10%62(▲38)

出典:国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第6回)資料」(2026年9月16日)。利益・配当がゼロの会社を想定した計算例です。

残余利益方式のイメージ 簿価純資産に数年分の超過収益を足し引きして評価するイメージ。高収益の会社は簿価純資産より高く、低収益や赤字の会社は簿価純資産より低く評価される 評価額 = 簿価純資産 ± 数年分(5年程度)の超過収益 簿価純資産の水準 簿価純資産 出発点 +超過収益 期待以上に稼ぐ 高収益の会社 簿価純資産より高い評価 -減額 低収益・赤字の会社 簿価純資産より低い評価 → または
図3 残余利益方式のイメージ(国税庁「有識者会議(第5回・第6回)資料」をもとに作成。棒の高さは目安で、実際の金額を表すものではありません)

国税庁の試算では、大きな会社ほど上がる傾向

9月16日の第6回会議では、令和2年分から令和5年分までの相続税・贈与税の申告データから無作為に抽出した評価会社のうち、類似業種比準価額と純資産価額の両方を算出している1,378社について、残余利益方式で評価し直した試算が示されました。加算期間5年、還元率8%、しんしゃく率0.8などを仮に置いた計算で、現行の申告評価額(中央値)と比べると、次のような結果です。

国税庁試算:現行の申告評価額と比べた増減 加算期間5年、還元率8パーセント、しんしゃく率0.8と仮定した国税庁の試算。現行の申告評価額の中央値と比べ、大会社はプラス71.7パーセント、中会社はプラス12.1パーセント、全体はプラス2.3パーセント、小会社はマイナス21.8パーセント 現行の申告評価額(中央値)と比べた増減(仮定を置いた試算) ±0(現行と同じ) 大会社 128社 +71.7% 中会社 820社 +12.1% 全体 1,378社 +2.3% 小会社 430社 ▲21.8%
図4 国税庁の試算(加算期間5年・還元率8%・しんしゃく率0.8と仮定)。出典:国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第6回)資料」(2026年9月16日)。還元率・しんしゃく率などは今後の検討事項で、確定した数字ではありません

同じ資料では、現行の評価額より下がる会社の割合も示されています。しんしゃく率を0.7〜0.8と仮定した場合、小会社ではおおむね7〜8割、大会社でもおおむね2〜3割の会社で評価額が下がるとされています。つまり「全員が上がる」わけではなく、会社の規模や、資産と利益のバランスによって、上がる会社と下がる会社に分かれるというのが、いま示されている姿です。

適用時期はまだ示されていません

令和8年9月17日時点で、国税庁から見直しの適用時期は公表されていません。還元率など、次回以降に議論される論点も残っています。

週刊税務通信によると、国税庁は今秋をめどに見直しの詳細を詰める方針で(No.3913)、評価の水準や税負担のあり方などは、有識者会議を経て最終的には税制改正のプロセスで決まるとされています(No.3914)。専門誌では「早ければ令和10年から」との見方も報じられていますが、これは国税庁が公表した適用時期ではありません。

出典:国税庁「有識者会議(第6回)資料」、週刊税務通信 No.3913・No.3914(税務研究会)、大蔵財務協会「税のしるべ」関連記事(2026年4月)

事業承継税制の「期限」と、その後

事業承継税制(特例措置)は、後継者が自社株を贈与や相続で受け取ったとき、その贈与税・相続税の納税を猶予し、一定の場合には免除する制度です。10年間限定の措置で、期限が近づいています。

項目内容
特例承継計画の提出令和9年9月30日までに、都道府県に提出が必要(認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けたうえで作成)
特例措置の適用期限令和9年12月31日までの贈与・相続等により、対象株式を取得すること
期限後のあり方令和8年度与党税制改正大綱で「令和9年度税制改正において結論を得る」とされている

出典:中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」、経済産業省「令和9年度税制改正に関する経済産業省要望のポイント」

特例承継計画の提出期限は、令和8年度の改正で令和8年3月31日から令和9年9月30日へ1年6か月延長されました。しかし、特例措置の適用対象となる贈与・相続等の期限(令和9年12月31日)は変わっていません。ここは誤解しやすいので注意が必要です。

中小企業庁の検討会が示した「期限後」の方向性

中小企業庁の「中小企業の親族内承継に関する検討会」は、8月5日に報告書(案)を公表しました。事業承継税制の期限後のあり方について、たとえば次のような方向性が示されています。

  • 猶予された資金を賃上げや設備投資、地域貢献などに活用した会社について、評価減制度や猶予税額の免除などを検討(課税逃れ防止策や上限の設定もあわせて検討)
  • 雇用確保要件を、人口減少を踏まえて見直す(ベンチマークと比べて判定する考え方など)
  • 海外子会社の株式を対象にすることの検討、一定期間は利子税を免除するような仕組みの検討
  • 成長投資や賃上げの原資を株価を下げるための節税対策に使うような行動を、是正する方策の検討

報告書(案)は、国税庁の有識者会議にも触れ、非上場株式の評価方法の変更は中小企業の事業承継に大きな影響が懸念されるため、動向を注視する必要があるとしています。

出典:中小企業庁「中小企業の親族内承継に関する検討会 報告書(案)」(令和8年8月5日)

期限後に向けて、国と税理士会が求めていること

経済産業省は、令和9年度の税制改正要望で、事業承継を機に「稼ぐ力」の強化に取り組む中小企業を後押しする措置へ、事業承継税制を抜本的に見直し・強化することを求めています。

日本税理士会連合会の建議書では、次のような点が重要項目として挙げられています。

  • 株式評価の見直しにあたっては、継続企業であることや評価の安全性に配慮し、大幅な負担増となる場合には、一定の評価減制度など事業承継の支援措置が必要であること
  • 法人版事業承継税制(一般措置)に代えて、猶予の対象を事業用資産に絞り、贈与・相続後の一定期間(例えば5年から7年)に要件を満たせば猶予額を免除するような、新しい猶予制度をつくること
  • 相続などで取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合、一定の要件のもとで所得税を非課税とする措置をつくること

出典:日本税理士会連合会「令和9年度税制改正に関する建議書」(令和8年6月25日決定、8月27日に関係省庁へ提出)

評価のルールと、納税猶予の制度。この二つがセットで議論されていくことになりそうです。

税理士として、私はこう考えます

税理士 眞弓倫子

食料品の消費税を2年間1%に下げる議論と同じ時期に株価評価の見直しを知り、当初は「税収減を補う議論なのだろうか」と感じました。ただし、公表資料上、両者を結び付ける説明は確認できません。国税庁は、今回の見直しのきっかけを会計検査院の指摘を踏まえた評価の公平性・適正性の検討と説明しています。

そして、もしこの見直しが実際に決まったら、どんな会社が一番困るだろうと考えました。私が特に心配しているのは、現行制度で相対的に評価が低かった大会社や、純資産に対する収益力が高い会社では、株価が大きく上がるケースがあるのではないかということです。一方、赤字・低収益の会社では簿価純資産より低い評価となるイメージが示されていますが、債務超過会社を含む個別会社への影響は、最終的な算式や下限の取扱いなどが未確定であり、現時点では断定できません。

国税庁の資料では、純資産に対する収益率が株主の期待収益率を上回る会社は簿価純資産より高く、下回る会社や赤字の会社は簿価純資産より低く評価されるイメージが示されています。第6回資料の一定の仮定を置いた試算でも、中央値では大会社ほど現行評価額からの上昇幅が大きく、小会社では評価額が下がる会社が多い傾向が出ています。ただし、会社規模だけで決まるものではなく、個社の資産・収益状況によって結果は異なります。

税理士 眞弓倫子

利益を出し、純資産を積み上げてきた中小企業は、日本にとってとても大切な会社だと私は思っています。事業承継に頭を悩ませている経営者の方が多い中で、実質的な増税になってしまうと、株を相続や贈与で引き継いだときに税金が払えなくなるかもしれません。そうなると「それならM&Aで売ってしまおう」という考えが出てくるのではないかと心配しています。

とはいえ、税制が変わったら、国民として従わなければなりません。だからこそ、困ったことにならないように、どんな対策があるのかを一緒に考えていきましょうとお伝えしたいです。

制度が決まる前に、経営者ができること

制度の中身が決まるのはこれからです。それでも、どう決まっても役に立つ準備はあります。私が事業承継のご相談を受けたときに、最初に確認していることを中心にお伝えします。

① まず、自社株がいくらなのかを知る

税理士 眞弓倫子

事業承継のご相談を受けたとき、私がまず一番に気にするのは「株価がいくらか」です。そこがわからないと、税金の面では何の対策もできません。ですから、最初に株価を試算させていただきたいと考えています。

株価がわかると、「承継のときにどのくらいの税金がかかりそうか」「見直し案のもとでは、どちらに動きそうか」を考える土台ができます。国税庁の資料では、見直し案の計算には直前期末の貸借対照表と過去数年分の損益計算書、法人税申告書の数値を使うことが検討されています。決算書と申告書を数期分そろえておくと、試算がスムーズです。

② 誰に、どう引き継ぐのかを決める

税理士 眞弓倫子

後継者がいるのか、いないのか。親族に渡すのか、従業員が引き継ぐのか、それともM&Aを考えているのか。それによって対策はまったく違ってきます。ここは必ず確認するようにしています。

③ ギリギリにしない

税理士 眞弓倫子

ギリギリになってからのご相談では、できることがほとんど残っていません。何事も早めの対策が必要です。株価がわかっていないなら、まず評価から始めることになりますので、株価を算定するための資料を、できるだけ早く出していただきたいと思っています。

事業承継税制の特例措置を使う可能性があるなら、なおさらです。特例承継計画の提出期限(令和9年9月30日)と、特例措置の適用期限(令和9年12月31日)から逆算すると、検討に使える時間はそれほど長くありません。

事業承継の準備の進め方 自社株の評価額を知る、承継の方向を決める、対策を選ぶ、早めに実行する、の4つのステップ。期限ぎりぎりでは選べる対策が限られる 1 自社株の 評価額を知る 決算書・申告書を 早めに準備 2 承継の方向を 決める 親族/従業員/ M&A 3 対策を選ぶ 制度の動きも 見ながら検討 4 早めに 実行 期限ギリギリの相談では、選べる対策がほとんど残りません 特例承継計画の提出期限:令和9年9月30日 / 特例措置の適用期限:令和9年12月31日
図5 事業承継の準備の進め方

経営者のための「事業承継 いま確認すること」チェックリスト

ここまでの内容をもとに、確認していただきたいことをまとめました。全部できていなくても大丈夫です。気になる項目から、顧問税理士と一緒に進めていきましょう。

自社株の「いま」を知る

  • 直近の決算をもとに、自社株の評価額を試算したことがある株価がわからないと、税金の対策は始められません。
  • 株価の試算に使う資料(決算書・法人税申告書を過去5年分程度)をすぐに出せる国税庁の見直し案では、直前期末の純資産と過去5年間の利益・配当を、法人税申告書の数値をもとに使うことが検討されています。
  • 自社の純資産に対する収益力(ROE)を把握している国税庁資料のイメージでは、純資産に対する収益率が株主の期待収益率を上回る会社は、簿価純資産より高く評価されます。
  • 株主名簿で、誰が何株持っているかを確認している見直し案では、少数株主向けの配当還元方式を使える範囲の整理も検討されています。

会社の仕組みで確認したいこと

  • 従業員持株会がある場合、規約に定めた買取価格などを確認している第6回資料では、一定の要件のもとで固定価格による評価を認める案が示されています。
  • 土地や株式などの資産が多い会社、開業して5年たっていない会社、組織再編をしたばかりの会社かどうかを確認している見直し案では、これらは残余利益方式ではなく純資産価額方式で評価する「特定の評価会社」とすることが検討されています。
  • 100%子会社がある場合、グループ全体の資産・利益を把握している見直し案では、完全支配関係にある子会社の価値を親会社の評価に反映することが検討されています。
  • 一時的に利益を下げるだけの方法に頼って、評価を下げようとしていない見直し案では、役員退職金やオペレーティング・リースなど一時的な損益を除いた「正常な利益」で評価する方向が示されています。中小企業庁の報告書(案)でも、株価を下げるための節税対策に会社の資産を使う行動を是正する方策の検討が挙げられています。

誰に、どう引き継ぐか

  • 後継者がいるかどうか、はっきりしている
  • 引き継ぐ方向(親族・従業員・M&A)を考えている方向によって、とるべき対策がまったく違います。

期限と制度の動き

  • 事業承継税制(特例措置)を使う可能性があるか、検討した特例承継計画の提出期限は令和9年9月30日、特例措置の適用期限は令和9年12月31日です。
  • 特例承継計画の「提出期限の延長」と「適用期限」を混同していない延長されたのは計画の提出期限(令和9年9月30日まで)だけで、特例措置の適用対象となる贈与・相続等の期限(令和9年12月31日)は変わっていません。
  • 株式評価の見直しや、期限後の事業承継税制は「まだ決まっていない」ことを理解している令和9年度税制改正の議論を見ながら判断する必要があります。
  • 期限ギリギリではなく、今のうちに税理士へ相談する予定を立てている

まとめ

自社株の評価ルールは、一般の評価会社について、会社規模による区分と類似業種比準方式を廃止し、「残余利益方式」を原則とする方向で議論が進んでいます。国税庁が一定の仮定を置いて行った試算では、中央値でみると規模の大きい会社ほど現行評価額からの上昇幅が大きい傾向が示され、事業承継税制の特例措置も令和9年12月末に期限を迎えます。

制度がどう決まるかは、まだわかりません。それでも、自社株の評価額を知ること、誰にどう引き継ぐかを考えること、そして早めに動き始めること。この三つは、私が事業承継のご相談で必ず大切にしていることです。

税制が変わったら、それに従うしかありません。だからこそ、困ったことにならないように、今のうちから一緒に備えていきましょう。

「うちの株価、いくらになるんだろう?」と気になった方は、お気軽にご相談ください。

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参考資料

  1. 国税庁「『取引相場のない株式の評価に関する有識者会議』の開催について」(令和8年4月16日)
    https://www.nta.go.jp/about/council/nai-hyoka/pdf/kaisai_kabukaigi.pdf
  2. 国税庁「審議会・研究会等(取引相場のない株式の評価に関する有識者会議)」
    https://www.nta.go.jp/about/council/kenkyu.htm#nai-hyoka
  3. 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第5回)資料」(2026年8月20日)
    https://www.nta.go.jp/about/council/nai-hyoka/20260820/pdf/05shiryo_kabukaigi.pdf
  4. 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第6回)資料」(2026年9月16日)
    https://www.nta.go.jp/about/council/nai-hyoka/20260916/pdf/06shiryo_kabukaigi.pdf
  5. 中小企業庁「中小企業の親族内承継に関する検討会 報告書(案)」(令和8年8月5日)
    https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/shinzoku/006/002.pdf
  6. 中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」
    https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu_zouyo_souzoku.html
  7. 経済産業省「令和9年度税制改正に関する経済産業省要望のポイント」(令和8年8月31日)
    https://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2027/pdf/02.pdf
  8. 日本税理士会連合会「令和9年度税制改正に関する建議書」(令和8年6月25日)
    https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/whatsnew/doc/kengisyo-R9.pdf
  9. 日本税理士会連合会「令和9年度税制改正に関する建議書等を関係省庁に提出」
    https://www.nichizeiren.or.jp/whats-new/20260828b/
  10. 大蔵財務協会「取引相場のない株式の評価見直しで有識者会議、改正通達の適用は早ければ令和10年から」
    https://www.zaikyo.or.jp/news/n126207.html
  11. 週刊税務通信 No.3913(令和8年8月24日号)「国税庁 非上場株式の評価見直しの方向示す」「中企庁 親族内承継検討会の報告書案を公表」「相続税・贈与税関係(措置法含む)の改正のポイント」(税務研究会)
  12. 週刊税務通信 No.3914(令和8年8月31日号)「国税庁の非上場株評価見直し案が判明」(税務研究会)
  13. 週刊税務通信 No.3915(令和8年9月7日号)「各府省庁 令和9年度税制改正要望を公表」「日税連 税制改正建議書で株評価見直しを提示」「青木孝徳 国税庁長官就任インタビュー」(税務研究会)

※本記事は令和8年9月17日時点の公表情報をもとに作成しています。制度の詳細は、各出典をご確認ください。

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