仕事ができる人より、会社を壊さない人を採るべき理由

こんにちは🍀名古屋市で活動する税理士の眞弓倫子です。

人を採用するとき、多くの社長さんは「仕事ができる人がほしい」と考えると思います。経験があって、資格を持っていて、数字を出せて、すぐに戦力になりそうな人。もちろん、それはとても大切なことです。

ただ、いろいろな職場でいろいろな人を見てきて、最近の私はこんなふうに思うようになりました。中小企業では、「仕事ができる人」よりも「会社を壊さない人」を採るほうが大事になる場面がある、と。

たった一人の影響が、会社全体を左右する

少し強い言い方かもしれません。でも、人数の少ない会社では、たった一人の影響が本当に大きいのです。大企業なら、多少クセのある人がいても、部署が分かれていたり、距離を取れたり、組織の仕組みで吸収できる部分があるのかもしれません。けれど、10人前後の会社ではそうはいきません。

一人が文句ばかり言う。一人が陰で人の悪口を言う。一人が自分のミスを認めない。一人が周りにきつく当たる。たったそれだけで、職場の空気は一気に重くなります。

そして何より怖いのは、そういう人が入ったことで、もともといた真面目な人や優秀な人のほうが疲れてしまうことです。採用した一人が辞めるだけなら、損失はまだ限定的かもしれません。でも、その人の影響で、これまで会社を支えてくれていた人が辞めてしまったら——その損失は、計り知れないものになります。

採用ミスのコストは、給与だけではない

採用のミスにかかるコストは、給与だけではありません。社会保険料もかかりますし、面接や教育に費やした時間もあります。社長や社員が振り回される時間、悪くなった空気、そして既存社員の離職。そう考えると、採用は単なる人手不足の解消ではなく、会社の未来を左右する大きな経営判断なのだと思います。

「仕事はできるけれど、周りを疲れさせる人」とは

では、「仕事はできるけれど、周りを疲れさせる人」とは、どんな人でしょうか。

たとえば、数字はきちんと出すし、仕事も早い。知識も十分にある。でも、自分と同じ完璧さを周りにも求めすぎてしまう人がいます。

仕事で正確さが大事なのは言うまでもありません。特に数字を扱う仕事で「いい加減でいい」なんてことはありません。ただ実務には、そこまで細かく詰めなくてもいい部分や、解釈に幅のある部分も確かにあります。法律や制度だって、すべてがカチッと一つの答えに決まるわけではないのです。

それなのに、何でもかんでも「これはこうでなければいけない」と決めつけ、それを人にも強く求める。そうなると、周りはだんだん疲れていきます。正しいかどうか以前に、その人がいることで時間が奪われ、空気が重くなり、周りが萎縮してしまう。これでは、本人がどれだけ優秀でも、会社全体としてはマイナスになってしまうことがあります。

履歴書には書かれない「人間力」

反対に、派手な成果を出すわけではないのに、「この人がいると職場が落ち着くな」と感じさせてくれる人もいます。

感じがよくて、ちゃんと挨拶ができる。「ありがとう」が自然に言える。困っている人がいたらさりげなく手伝える。コピー用紙が切れていたらさっと補充する。忙しそうな人がいれば電話を取る。汚れていれば片付ける。

こうした行動は、履歴書には書かれません。面接でも見えにくいでしょう。でも、会社の中では本当に大切なことです。私は、こういうところにこそ、その人の人間力が表れると思っています。

穏やかであること。素直であること。感謝ができること。ミスを認められること。約束を守ること。周りをよく見ていること。こういう人は、会社を壊しません。それどころか、目立たないところで、静かに会社を支えてくれます。

面接で見ておきたい視点

採用面接では、どうしても経験やスキルに目が行きがちです。もちろん、それも確認しなければなりません。でも社長さんには、ぜひ一歩立ち止まって「この人が入ったら、今いるメンバーとの関係はどうなるだろう」と想像してみてほしいのです。

今いる社員と合いそうか。会社の空気になじめそうか。周りに感謝できる人か。ミスをしたときに、それを認められる人か。不平不満ばかり言うタイプではないか。

特に気をつけたいのは、前職の悪口がやけに多い人です。もちろん、前の職場で本当に大変な思いをした方もいるでしょうし、転職の理由には本人だけではどうにもならない事情もあります。それでも、面接の場であまりに悪口が多いときは、少し慎重になったほうがいいと思います。

この人は、うちに入っても同じように不満を口にするのではないか。人の悪いところばかり見てしまうのではないか。何かあったときに、自分の問題として受け止められる人なのか。そういう視点は、やはり必要です。

もう一つ気になるのは、質問にまっすぐ答えない人です。聞かれたことには答えず、話がどんどんそれていく。自分の話したいことだけを話してしまう。会話のキャッチボールがどうもしにくい。こういう場合、入社後のやりとりでも苦労する可能性があります。

それでも、人は100パーセントは見抜けない

ただ、正直に言えば、面接だけで人を見抜くのはとても難しいことです。最初は「すごく良さそう」と思った人が、いざ一緒に働いてみると違った、ということもあります。逆に、面接では控えめだった人が、入ってみたらとても良かった、ということもある。人は、100パーセントは見抜けません。だからこそ、採用は怖いのだと思います。

採用の前に、一度立ち止まる

実は、私自身も今、ありがたいことに仕事が増えてきて、考えることがあります。このまま受け続ければ、どこかで必ず頭打ちが来る。では、仕事を断るのか。人を入れるのか。人を入れるなら、今の事務所では手狭だから、新しく借りるのか——。

人を採用するというのは、ただ給与を払うという話ではありません。固定費が増え、場所が要り、教育の手間もかかる。そして何より、今の仕事のやり方や、慣れ親しんだ空気そのものが変わります。

だから私は、「忙しいからとりあえず人を雇おう」とは、なかなか簡単には考えられないのです。本当に人を入れる必要があるのか。外注では対応できないのか。業務を整理する余地はないのか。値上げをして、受ける仕事を選ぶという道はないのか。採用の前には、一度立ち止まって考える時間が必要だと思います。

会社を一緒に良くしてくれる人を

仕事ができる人を採ることは、もちろん大事です。でも、それ以上に大事なのは、会社を壊さない人を採ることです。

中小企業にとって、人は何よりの財産です。けれど同時に、採用は大きなリスクでもあります。だからこそ社長さんには、「能力が高そうだから」という理由だけで決めてほしくないのです。

その人は、今いる社員と一緒に働けそうか。感謝ができる人か。ミスを認められる人か。人の悪口ばかり言わない人か。周りを見られる人か。会社の空気を、少しでも良くしてくれそうな人か。

採用は、売上を伸ばすための手段かもしれません。でも、それによって会社の空気が壊れてしまえば、結局は利益も人も失ってしまいます。

人を雇う前に、どうか一度だけ立ち止まって、考えてみてください。その人は、「仕事ができる人」ですか。それとも、「会社を一緒に良くしてくれる人」ですか。

中小企業の採用では、後者の視点こそが、とても大事だと思うのです。

よかったらシェアしてください!
目次