税理士法人の代表らが社労士法違反で書類送検―「何でもやります」という事務所に注意―

税理士法人の代表や部下が書類送検されたというニュース

先日、大阪の税理士法人の代表らが、社会保険労務士法違反の疑いで書類送検されたというニュースが報じられました。

報道によると、社会保険労務士の資格を持たない税理士法人の関係者が、社会保険に関する手続きを行い、報酬を受け取っていた疑いがあるとされています。

社会保険の手続きは、社会保険労務士法により「社会保険労務士の有償独占業務」と定められています。資格を持たない者が、報酬を得てこれらの業務を行うことは、法律違反となります。

今回の件は、金額としては大きくないものの、「士業の業務範囲を逸脱した行為」として、非常に重い意味を持つニュースだと感じています。

目次

正直、あり得る話だと感じた理由

税理士としてこのニュースを見たとき、正直に言うと「起こり得る話だな」と感じました。

というのも、実務の現場では、

  • 「税理士さんなら、社会保険の手続きもできますよね?」

  • 「ついでにやってもらえませんか?」

といった相談を受けることは、決して珍しくありません。

多くの経営者・個人事業主の方にとって、税理士業務と社労士業務の境界線は非常に分かりにくいのが実情だと思います。

税理士法や社会保険労務士法を学んでいるのは士業だけであり、「どの業務が、どの資格者しかできないのか」を一般の方が正確に理解するのは、正直難しいです。

今回の問題の本質はどこにあるのか

今回の件で最も問題だと感じるのは、社労士の有償独占業務に、税理士が踏み込んでしまったことです。

昔から、業界内では「ひっそりと社労士業務を引き受け、報酬を受け取っている税理士がいる」という話を耳にすることもありました。

そうした長年の慣習に対して、今回の書類送検は、ある意味見せしめ的な効果を持つニュースだったのではないか、とも感じています。

実務で特に注意が必要な業務

特に注意が必要だと感じるのは、社会保険の手続きです。

「給与計算をしているから」
「顧問契約があるから」

といった理由で、社会保険の届出や手続きを有償で行うことは、リスクが高い行為です。

私は、お客様から社労士業務の依頼を受けた場合、

  • 信頼している社会保険労務士をご紹介する

  • 税理士として、一般的な説明や考え方をお伝えする相談レベルに留める

という対応をしています。

「できないことは、できない」とお伝えすることも、専門家としての大切な役割だと考えています。

こんな税理士事務所には注意してほしい

今回のニュースを踏まえ、次のような税理士事務所には注意が必要だと感じます。

  • 業務内容や範囲が曖昧

  • 「何でもできます」「全部やります」と安易に引き受ける

  • 契約書や業務説明がほとんどない

一見すると便利に見えるかもしれませんが、そのリスクを負うのは、最終的に依頼者自身です。

安心できる税理士事務所の見分け方

逆に、信頼できる税理士事務所には共通点があります。

  • どの業務を引き受けるのかを明確に説明してくれる

  • 業務ごとに、料金の考え方を事前に示してくれる

  • それは他士業の業務ですときちんと線引きしてくれる

こうした姿勢のある事務所は、長期的に見て、安心して相談できるパートナーになりやすいと思います。

社労士側にも同じことが言えるかもしれません

今回のニュースは「税理士が社労士法違反」という内容でしたが、逆に、社労士が給与計算から年末調整まで引き受けているケースを見かけることもあります。

私がお付き合いしている社会保険労務士の方々は非常に誠実で、年末調整については税理士に依頼するという線引きを、きちんとされています。

今回の件は、「次は逆の立場でも問題になり得るのではないか」と感じさせるニュースでもありました。

最後に 経営者・個人事業主の方へ

経営者や個人事業主にとって、一番身近な専門家は税理士かもしれません。

しかし、何でもかんでも税理士がやっていいわけではありません。

それぞれの士業には、法律で定められた独占業務があります。
その線引きを理解し、守ることが、結果的にご自身を守ることにつながります。

「きちんと説明してくれるか」
「できないことを、できないと言ってくれるか」

ぜひ、そんな視点で税理士事務所を選んでいただければと思います。

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