近年、中小企業の間で、退職金制度として「はぐくみ企業年金(確定給付企業年金)」を導入するケースが増えています。これまで主流だった「企業型確定拠出年金(企業型DC)」に加え、新たな選択肢として注目されている制度です。
本記事では、
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はぐくみ企業年金の仕組み
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企業型DCとの違い
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税務・社会保険上のポイント
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導入時の注意点
を順に整理して解説します。
1.はぐくみ企業年金とは?
「はぐくみ企業年金」は、確定給付企業年金の一種です。
これまで中小企業では導入のハードルが高いと考えられてきた確定給付型の年金制度ですが、
そのイメージを払拭し、導入実績を伸ばしています。
多くのケースで選択制が採用されており、役員・従業員の給与の一部を掛金とする、給与総額を変えずに導入できるという特徴があります。
2.企業型DCとの比較
現在、多くの企業で導入されている選択制の企業型DCと比較すると、以下の違いがあります。
① 掛金の上限額
| 制度 | 掛金上限 |
|---|---|
| 企業型DC | 月額 約5万5千円 |
| はぐくみ企業年金 | 給与の20%まで(上限 月額40万円) |
給与の高い役員・従業員ほど、より多くの金額を積み立てられる点が大きなメリットです。
② 元本保証と運用の違い
企業型DC
・自ら運用することで増やせる可能性がある
・元本割れのリスクがある
はぐくみ企業年金
・確定給付型のため元本保証
・自分で運用はできない
③ 加入要件・受給時期
加入要件
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企業型DC:役員1人の法人でも加入可能
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はぐくみ企業年金:役員のみの法人などは加入不可
受給時期
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企業型DC:原則60歳以上
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はぐくみ企業年金:年齢制限なし、退職時に受給可能
3.税金・社会保険料のメリット
はぐくみ企業年金の掛金には、以下のメリットがあります。
社会保険料
掛金部分は社会保険の算定対象から除外→ 個人・法人ともに負担が軽減
所得税・住民税
掛金は給与所得の収入金額に算入されない→ 課税対象が減少
給与明細上では「はぐくみ企業年金」としてマイナス表示され、差額に対して課税される仕組みです。
4.導入時の注意点
① 運用リスクは会社が負う
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企業型DC:運用結果に会社は関与しない
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はぐくみ企業年金:積立不足が生じた場合、事業主が補填
② 損金算入のタイミング
掛金は支払時点で損金算入決算時に「未払計上」した場合は損金不可→ 決算処理に注意が必要
③ 退職所得税制改正の影響
令和7年度税制改正によりDCの老齢一時金の退職所得控除調整期間が4年 → 9年に変更
ただし、はぐくみ企業年金は影響を受けません
まとめ
はぐくみ企業年金は、
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掛金上限が大きい
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元本保証
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税・社会保険料の負担軽減
といった特徴を持つ制度です。
一方で、
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役員のみの法人では加入不可
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会社が運用リスクを負う可能性
といった注意点もあります。
自社の状況と従業員のニーズに合わせて、最適な制度を検討してみてください。